核融合炉用テストブランケットモジュール内部の冷却材流動解析

目的

 本解析の目的は、核融合環境下で総合的な機能試験が実施されるテストブランケットモジュール(図1参照)の設計に際して、冷却材流動現象の実験結果と流体解析の結果を比較することで、材料腐食を考慮した設計手法を確立することです。
 流体解析では、壁近傍のせん断応力や乱流エネルギー等、構造材の浸食腐食に対してフィードバックする物理量を取得することを目的とし、テストブランケットモジュール側壁内部の全領域において、約300万要素の大規模な流体シミュレーションを実施しています。

図1:核融合炉用テストブランケットモジュール

解析対象

解析対象を図2に示します。複数の流路が組み合わさった複雑な形状となっていることが分かります。

図2:解析対象

解析条件

表1 に支配方程式などの解析条件をまとめています。

表1 : 解析条件

支配方程式非定常非圧縮Navier-Stokes方程式
乱流モデルLES(標準スマゴリンスキーモデル)
対流項離散化2次精度中心差分+10%の1次精度風上差分
時間積分法Euler陰解法
流体温度300 (℃), 573.15(K)
流体基準圧力15 (MPa)
流入量1.5 (kg/s)

各境界における境界条件を表2にまとめています。

表2:各境界における境界条件の設定

流入境界条件流出境界条件壁面境界条件
・質量流量(指定)
・密度(指定)
・乱流ドライバー
・静圧(指定)・No-slip
・断熱

解析規模と統計量取得時間

解析規模と統計量取得時間を表3にまとめています。

表3:解析規模と統計量取得時間

格子形状ヘキサメッシュ
格子数約300万
時間刻み幅1.0d-4 (s)
並列数128
計算速度500 (step/h)
5秒間の統計量計算に要する時間100 (h)

解析結果

核融合環境下で試験を予定しているテストブランケットモジュール内の冷却材流動現象をLESにより求め、 その解析結果より壁せん断応力図を、図3に全体図を、図4に拡大図を示します。

図3:壁せん断応力全体図

図4:壁せん断応力拡大図

壁近傍のせん断応力や乱流エネルギーを取得、乱流エネルギーの収支等、高次乱流統計量の取得も可能です。

Advance/FrontFlow/red の高度な流体解析技術により、核融合炉などの詳細な状況を確認することが困難な対象においても流れ場を予測することが可能です。

謝辞

本研究は、独立行政法人 日本原子力研究開発機構(現:国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構) 核融合研究開発部門ブランケット工学研究グループ様よりご提供いただきましたAFFrの解析結果になります。 独立行政法人 日本原子力研究開発機構(現:国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構) 核融合研究開発部門ブランケット工学研究グループ関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます 。

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