液柱崩壊解析によるVOF法の基本検証

目的

液柱崩壊時の自由表面を持つ液体のダイナミックな挙動を、VOF法(Volume of Fluid法)を用いて数値的に再現し、その予測精度を検証します。この検証により、Advance/FrontFlow/redに搭載されているVOF法の信頼性と、スロッシングなどの非定常な二相流現象への適用性を確認します。

解析モデル

解析モデルを図 1 に示します。二次元の矩形領域に、初期状態で左側に直立した液柱が配置されたモデルを使用します。重力により液柱が崩壊し、液体が広がる様子をシミュレーションします。これは、二相流解析におけるベンチマーク問題の一つであるダムブレイク問題に相当します。

解析領域の図
図 1. 解析領域

解析条件

VOF法を適用し、液体(水など)と気体(空気など)の二相流として非定常解析を行います。 解析条件を表 1にまとめています。

表 1.解析条件

項目設定
解析手法VOF法(Volume of Fluid法)
計算領域添付画像にあるような格子(メッシュ)で分割された二次元矩形領域。
初期値領域の左側に、高さと幅を持つ液柱を配置(液体率 F = 1 )。その他の領域は気体( F = 0 )。
物理現象重力による液柱の崩壊、液体の流動、自由表面の移動を追跡します。

解析結果

以下の図2に解析結果を、0.1秒から0.4秒までの時系列で示しています。

・液体挙動の計算結果: 液柱が時間経過とともに重力で崩壊し、壁面を伝って流下・拡散し、最終的に右側の壁面に衝突して跳ね上がる様子(波の形成)を捉えています。

・速度分布の計算結果: 崩壊する液体の内部や自由表面付近で、液体の流れの速度ベクトルが計算されており、流速が大きい箇所(赤色付近)と遅い箇所(青色付近)が明確に分かれています。特に崩壊初期から液面が広がる際に、水平方向への速い流れが発生していることが確認できます。0.1secから0.4secまでの液体挙動の計算結果は実験結果(*)と良好に一致しています。

速度分布の計算結果、液体挙動の計算結果の図
図 2.解析結果

まとめ

AFFrによるVOF法を用いた液柱崩壊解析の結果は、参考文献の実験結果(*)と良好に一致しています。この結果は、AFFrのVOF法が自由界面や液体の非定常な挙動を精度良く予測できることを示しており、スロッシング、液膜流動、濡れ性を伴う現象など、幅広い二相流解析に信頼性をもって適用可能であることを示しています。

(*)参考文献:Koshizuka and Oka, Moving-Particle Semi-Impact Method for Fragmentation of Incompressible Fluid, Nuclear Science and Engineering, Vol.123,pp.421-434, 1996.

カテゴリ

自由表面