目的
本解析の目的は、非対称ディフューザーという複雑な流れ場を対象に、RANS (Reynolds-Averaged Navier-Stokes) 乱流モデルの基本性能と妥当性を検証することです。特に、ディフューザーの傾斜壁で発生する流れの剥離や再付着現象といった複雑な流れを、代表的な2つの乱流モデル(RNG k−ϵ と SST k−ω)がどの程度正確に予測できるかを評価することに、重点を置いています。
解析条件
解析モデルは、片側が傾斜した壁面を持つ非対称ディフューザーの計算領域です。この非対称な形状により、流れは圧力勾配の影響を強く受け、特に傾斜側壁面で流れの剥離が生じやすく、乱流モデルの性能差が顕著に現れる評価に適しています。解析領域の図1には、入口の流入領域から流れが発達する領域までと、周期境界条件や対流流出条件などの設定された境界条件が示されています。

解析条件を表 1にまとめています。
表 1.解析条件
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| レイノルズ数 | 16,700 |
| 乱流モデル | RNG k-ε、SST k-ε |
| 入口平行部 | 10H |
| 流入ドライバー | 与えない |
解析結果
図2に解析結果を示し、ディフューザー内のいくつかの流れ断面における軸方向の速度分布を、実験値 (exp) と比較しています。グラフの速度プロファイルから、流れの剥離と再付着に伴う速度の歪みが捉えられていることがわかります。 この比較の結果、SST k−ω モデルによる予測結果が、RNG k−ϵ モデルと比較して、実験値の速度分布をより正確に再現していることがわかります。この解析結果より、SST k−ω モデルが本事例のような複雑な剥離流れの予測により適していることがわかります。
・主流方向平均速度 [m/s]

カテゴリ
熱流体
乱流